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刀 浜部見龍子寿幸 天保六年八月日
katana [Hamabe_Toshiyuki] |
特別保存刀剣
NBTHK Tokubetsu Hozon
品番No-sw13153
価格(Price) 販売済SOLD
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刃長 Blade length |
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反り Sori |
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元幅 Width at the hamachi |
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元重 Kasane |
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目釘穴 Mekugi |
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時代 Jidai |
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産地 Country |
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特徴:特徴:見龍子壽幸は因州鳥取藩の藩工で浜辺一派の四代目、見龍子寿幸は刀の折れ曲がりや刃味に特に留意し鍛刀していた刀工で、その事は浜部見龍子寿幸の手紙が各書籍で紹介されております。【去る亥の年(天保10年(1839)か?)、余、因鳥府に在りし時、秋9月、予松藩三好長之、余が未熟の業をしたいて、予松より来る。其の性質、廉直にしてつとむる事厚く、あくる年二月、長之と共に東都に下り、教示する事、前後四年、奥義を極めて帰らん事を需む。往くも帰るも忠孝の為なれば、是を止めるに忍びず、嗚呼別離の情骨肉を裂くが如く、別れの時言うべき事を知らず。只豪を走らして迷わざる所を知らしむ。刀剣は武士の魂にして、邪を断ち乱を治むる器なり。是を造ること常の心を以って常の刀を造るべし。いやしくも常の心なきものは、価により相州物をも造り、又一文字をも造る。其の造るところは自由なれども、取るべき掟なければ、後世之を鑑定するにむずかし。今常の刀を銘はば、かわらずの伝、後世に残りて目利きするに安し。ある人余に相州伝をもとむ。けれど余は性質愚鈍にして、人の好みに応ずる事あたわず。ただ鍛刀を眺め見て、その不剛不柔、実用に叶うところを鍛え、目利き者の為に迷わざるは、心を動かさざるが為なり。
世には目利きと云う者あり。其の目利き者の中にも、利鈍にかかわらず、古刀を愛して新刀は見もせざる者あり。古きを愛するは茶器をもてあそぶに等しく、中には利欲の為に、人の所持する良刀をくさしめ、是を売らしめ、巳が所持する所の鈍刀を誉めて、高金にて薦める。
只、武士の目利きは、新古上下を論ぜず、折れ曲がりせざる所の地刃を見分けるを以って、要用の目利きとはするなり。中には鍛冶によって、自ら刀を鍛え研師に因って鉄味を試み、其の解く所利にあたりて鍛冶の肺肝を貫く所あり。
よきも悪しきも人の言うところを聞いて、その善き所を選びて是を用い、そのよからざる所は是を捨て、連年丹誠をこらして修行する時は、妙処に到る甲を割り、骨を切って折曲せざる処の元を失うべからず。目利き者の中には刀剣を造る元をも知らず、書により数十刀を見て、ようやく沸、匂、板目、柾目の地刃を覚え、巳が好む所を進むる人あり。必ず迷うべからず。利鈍にかかわらざるの目利は多く、武用に心を用いるの目利は少なし。故に多くの武士僻者の目利きにまかせて、忠孝を戴くの刀を帯び、事に望みて折れもし、曲がりもして刀の為に負けを取らば、目利きしたる人の罪大也。
今後足下人に目利きをこわるる事あらば、新古上下を論ぜず、価を計らず、学び得たる所の利鈍を説いて、其の人の迷いを晴らし、古作の良きを見ては、黙して是を師とすべし。新古上下を論ずるは、僻者の目利きなり。価を計るは商家の目利きなり。刀は骨を切り、甲を裂くの器なれば、一研ぎにても肉を減らさざるこそ、要刀とはするなれ。
既に送る所の十か条は、新古の折れやすく曲がりやすきの内を選びて、数年穿鑿(研究研鑽の意)したる処の秘書なり。
必ず僻者の目利きに迷うて地鉄、焼刃に苦しむ事なかれ。唯相伝する処の十か条に因って、邪欲を捨て正直の心を持って、武用専一の刀を鍛はば、自然と上作の要処に至らん。
余が志す処は青江の地鉄を鍛え、備前の刃紋を焼き、関の剛にして曲がらざる処を主とするなり。
青江を好むは其の鍛うる所、細かくして実あるが故なり。備前の刃紋を移すは、火の軽くして折れざるが故なり。
関の鉄質を学ぶは、曲がらざるためなり。心を直にして丹誠をこらさば、天然と文質の兼備の良刀とはなるべし。油断なく修行するにしかず。よきも太刀 あしきも太刀のふりなれど 拳に秀でし 太刀ぞ太刀なれ】
因州鳥取藩 浜部寿幸
天保十四【1843】年九月日 寿幸妻 浜部菊女書
この年、見龍子寿幸40歳
(この後弘化3年(1846)眠龍子壽実が70歳で没し、後を追うように嘉永3年(1850)見龍子寿幸が47歳の若さで没す事になる。)
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